特別養子縁組に、行政書士として、関わらせていただいて10数年が経ちます。自分が子育てをするようになり、自分だけを見てくれる人(家族)の存在をどれだけ子どもは必要としているか、そして育てる側もまた、自分を必要としてくれる存在に励まされ、日々生きていく力になることか、と日々感じさせられます。
ところが、日本では、乳児院や児童養護施設に4万人ものお子さんがいます。施設にまかせっきりで、会いに行くことすらしない方もいるそうです。一方、お子さんを育てたいけれど、なかなか恵まれないという方もいらっしゃいます。
ただ、子どもが生まれる、というときに、「あたし、もしかして育てることができないかも・・」という場合、親身になって相談にのってくれるところがあるのでしょうか。自分で育てたらどうなるか、どうしたら育てられそうか。または、養子縁組をするとしたら、どうなるのか。そういうことをきちんと相談して、決断したことが特別養子縁組であるのなら、産みのお母さんも胸をはって、自分の決断を受け入れることができるのかも知れません。
一方、日本には今やさまざまな国籍の人がいます。
日本で生まれた赤ちゃんが、日本で暮らす外国籍夫妻のお子さんになることもありますし、海外駐在のご夫妻が日本から赤ちゃんを養子に迎えることもあります。また、日本にいる外国人の女性が予期せぬ妊娠をして、育てることができず、養子縁組を希望することもあります。
もしも育てることができない、という決断にいたったとしたら、できるだけ早く、この人に育ててもらいたい、という人が見つかるような団体に相談をしてもらえたら、と思います。相談事業を行っている団体は、第二種社会福祉事業としての届出を都道府県知事に行っている団体の中から、いろいろ情報収集をして、本当に子ども・実の親御さん、育てる側の親御さん、三者のことを考えてくれている団体を選んでほしいと思います。
実の親である方は、養子縁組に至るまで、ご自分が育てるとしたらどういう方法で育てることができそうか、事情によっては施設にお願いして面会をしながら、いつか一緒にくらすことができるという道を選ぶ人もいるかもしれません。でも、自分でいろいろ調べて、関係者の話を聞いて、自分や子どものためにいい選択をしてほしいと思います。
「自分が決めたこと」であれば、前向きに頑張っていけると思うのです。
決して、人から勧められたこと、手軽なインターネットのサイトの記事を鵜呑みにして安易な決断をしないでほしい、と思います。
昭和63年「特別養子制度」が設けられました。普通養子縁組との大きな違いは、 実の親との親子関係が断絶され、養親が実親と同じような親子関係を築くことができるのが最大の特徴です。
つまり、養ってくれる親(養親)とだけ、法律上の親子関係が形成されます。特別養子縁組については、最寄りの家庭裁判所に対して、特別養子縁組申立書を提出する必要があります。
要件としては、
1)養親は夫婦であること。その両親が養親になること
2)養親の一方は25歳以上。他方は20歳才以上であること
3)養子となるものが6歳未満であること
4)実の親の同意があること。
虐待などがある場合、行方不明なども場合も多く、この点はケースバイケース。
5)実の親による監督保護が著しく不適当で、子のため特に必要なとき
とされています。
ただし、申し立てをしてもすぐには認められません。
特別養子の場合は、実際に養子となる子供を試験的に6ヶ月以上、養育し、家庭裁判所に報告することが求められています。(調査官が自宅に訪れ、養育環境を見に来るそうです)
養親の経済的な状況、養育環境を裁判所が総合的に考慮して、その結果、 子の福祉にかなう、と判断されれば、認められることになります。
期間としては、約8ヶ月~1年はかかるようです。それまで子どもは住民票は養親のもとに(縁故者、同居者として)うつせるものの、戸籍は実親の戸籍に入ったままで、養親の養育を受けることになります。
特別養子は、実親との関係はなくなってしまうため、養親だけの扶養義務と相続権をもちます。また、基本的に離縁することが認められていません。それほど特別養子縁組は厳格なものであり、慎重に判断なされるものなのです。
実親が後になって出てくる、という恐れもあるかもしれません。
しかし、法律上、特別養子縁組をしていれば、子にとっては、法律上の扶養の義務もなく、相続権ももたないのです。
→ 戸籍の記載はどうなるのでしょうか?養子であることが分かりますか?
よくある質問ですが、特別養子縁組をすると、普通養子では、実の親と養ない親と双方の両親の名前が記載され、本人については、「養子」と記載されるのですが、 特別養子については、養親のみ記載され、養子ではない子供と同じように「長男(長女)」と書かれます。これについては、子が将来戸籍を見たときに、「実子同様」の記載がなされていることは、配慮されていると思います。
しかし
、特別養子であれば、子どもにその子が養子である、という事実を隠しておける、と勘違いされる方も多いのですが、実際には、特別養子縁組の審判により、戸籍に入ったことがわかる記載がなされます。「裁判確定により云々・・」(民法817条の2による裁判確定に基づく入籍である旨)の記載がなされ、戸籍を遡ることにより実父母が誰であったか知ることができるようになっており、一見したところはわかりませんが、専門家等が見ればわかりますし、実親の連絡先を捜すことも可能ではあります。これは養子の自分のルーツを知る権利に配慮したものとされています。
これとは別に、法律論ではなく、お子さんにいつ告知するか、という問題もあると思います。告知をしようと思っていた矢先に、戸籍を見て事実を知ってしまう、ということも生じてしまうかもしれませんので、この点、特別養子縁組だからといって、養子の事実は分からないようになっている、というわけではありません。
実際、養子縁組を行っている方のお話を聞く限り、みなさん、小さい時に「真実告知」をされて、産んでくれた人がいる、という事実を、それぞれのご家庭にあった形で伝えているようです。
特別養子縁組をするには、家庭裁判所へ申し立てが必要です。
特別養子縁組をすると、子どもとその実の親側との親族関係が消滅します。原則として6歳未満の子どもの福祉のために、特に必要があるときに、子どもとその実の親側との法律上の親族関係を消滅させ、実親子関係に準じる安定した養親子関係を家庭裁判所が成立させる縁組制度です。そのため、養親になる方は、配偶者があり、原則として25歳以上の方で、夫婦共同で養子縁組をする必要があります。また、離縁は原則として禁止されています。
特別養子縁組を申し立てる場合には、当事者がすべて日本人、ということであれば、ご自身でもできるかもしれません。専門家に依頼するとなると、代理人は、弁護士さん、になります。
もしも、当事者の中に外国籍の方がいる、となると、「準拠法」が日本の法律だけではなく、外国籍の方の本国法を調べることにもなります。
例A:養父が外国籍、養母が日本人。養子となる子が日本人のお母さんの子。
例B:養父が外国籍、養母が日本人。養子となる子が外国籍のお母さんの子。
例C:養父母が外国籍。養子となる子が日本人のお母さんの子。
上記のような例では、外国籍の方の国の法律(親子関係に関する法律)を精査し、翻訳したりする必要性が出てきます。
たとえば、アメリカ国籍の夫婦が日本国籍の児童を養子に迎える場合、アメリカの法律(州法)によって判断されます。
裁判所では州法の提出を求められることがあります。(訳文)そして、それに加え、日本の民法による保護要件(実両親の同意など)が適用され、慎重に審査されます。養子が外国籍であるときは、その国の法律の保護要件を調べる必要があります。
渉外養子縁組は、当事者がすべて日本人、というケースより、はるかに専門性が必要ですが、日本では外国籍の方が養子縁組の当事者になるケースは今後ますます増えていくと思います。外国籍の方を含めた縁組がうまくいって、幸せな家庭を築いているご家族もいらっしゃいますので、あきらめずに、福祉団体、法律の専門家に相談してほしいと思います。
特別(渉外)養子縁組の成立には、子どもを6か月養育した期間が審査されます。調査官が家庭訪問などを行い、本当に子どもを安定した環境で養育していくことができるか、実親の同意があるか確認がなされます。実親との親子関係が断絶されるため、慎重に審査されます。
当事者がすべて日本人であればご自身だけでも申し立てをして、審理がすすみ、無事に名実ともに親子となれた、というお話はよく聞きます。
ところが、当事者に外国籍の方がいる場合、その方の本国法を調べて訳文等を提出するということなどもあります。また、養親さんが国内にいる外国籍夫妻である場合、言葉の問題もあります。そのようなとき、弁護士さんにお願いすることも、特別(渉外)養子縁組をスムーズにすすめていくためにも必要ではないかと思います。法律面はもちろんのこと、精神面でもバックアップが得られるかと思います。
実際、裁判所でも、渉外養子縁組はあまりないケースです。
そして、日本全国、(赤ちゃんが新しい生活をはじめている住所地が管轄)さまざまな管轄で行われるものですので、養親さんの想いをしっかりカタチにしてくれる代弁者がいるとよいのではと、いくつかの縁組に関し、協働させていただいたことから感じています。
渉外養子縁組を手掛けている小野寺朝可さん(弁護士)のサイトをご紹介します。
何件もお仕事を一緒にさせていただいていますが、本当に頼れる弁護士さんです。